「敵国になり得る国・米国」

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締め切りが集中しているので、今日は新刊の紹介だけにします。

「敵国になり得る国・米国」(PHP研究所)の見本が届いた。帯は「いま米中の『日本処分』が始まった アメリカと中国は舞台裏で「経済的同盟関係」を築こうとしている」。装丁もシンプルで、赤と白のコントラストがいい。いずれも編集者のTさんの努力の賜物だ。

時代が激動する。だが、その只中にいる人間には変化がなかなか実感できない。いま東アジアの政治構造は大きく変わろうとしている。米中両国の間に新しい枠組みができつつあるからだ。
中国市場経済とは共産党が上から牽引する『資本主義』化のことである。その特徴は有力な独占国営企業の経営権を中国版『ノーメンクラツーラ」(高級官僚)たちが握っていることだ。いま中国全土では、建前上は「全人民の所有」であるはずの国有資産を共産党組織と党員たちが私物化する現象が一般的で、市場化と腐敗がこれに拍車をかける。当然大衆は反発し、怒りの水位は高まるばかりである。
中国経済の主役は、戦後の日本に出現した松下やホンダなど民間のパイオニア精神あふれる経営者たちではない。純然たる民間資本は例外なく99%が零細企業である。彼らの最大の悩みは「銀行が融資をしてくれない」ことだ。だが政治力を背景にした国有企業にはそんな心配はない。情実融資が通常だからである。その結果が国有4大銀行の膨大な不良債権というわけなのである。彼ら『赤い財閥』はひたすら輸出に成長をかける。最大のマーケットは国内ではなく、米国である。

米中に対立点はたくさんある。だがそれが即、対決にはつながっていない。ここが大事な点である。ブッシュ政権も例外ではない。大統領の変身はあきらかだ。彼はすでに北朝鮮を『ならず者国家』と非難してはいないし、政権の発足時には、台湾を「共和国」と誤って(?)ラジオ番組で発言した彼はいまでは一転して『台湾独立は容認しない』とこれを切り捨てる。まだある。そもそもブッシュ政権が船出した際に、中国を『戦略的ライバル関係』と規定したのはライス国務長官だった。そのライスをいまでは人民日報が「間違いなく中米関係を前進させる」人物と激奨する。これは中国が変わったからなのか、それともブッシュの『変身』が理由なのか。両方がともに正しいのである。

「赤い貴族」と米国グローバル資本との共演が始まった。これが、まぎれもない米中関係の基軸である。『いささかも経済建設をゆるがせにしてはならない』。鄧小平以来の歴代の中国指導者は確固としてこの路線を不動にしてきた。イデオロギーなき中国では経済運営の成功だけが政権安定の鍵なのだ。米国は中国製品の最大の輸入国だし、中国は米国の有力な国債購入国である。つまり、互いがそれぞれが急所をつかみあう相互補完関係が実相といえる。だからこそ対決はできない。だが種種の対立はある。そのため、矛盾を対決にエスカレートしないようなリスクヘッジが外交的課題になりうるのである。金政権の延命、台湾の独立阻止が当面のテーマである。米中『同盟』を仕掛けているのはキッシンジャーたち政治的リアリストたち、元米国政府高官である。ブッシュファミリーの中国との癒着も見逃せない。彼らは対決をエスカレートさせて、米中両国の戦略的な利益がダメージを受けることに警戒的である。両国はニクソン訪中からほぼ40年、そのことを学んだ。当面米中関係の後退はない。この事実は東アジアのパラダイムを根底から激震させるはずである。

こんなことを書いています。定価1300円(税別)です。
一般書店に並ぶのは28日からになります。
関心のある方は手にとってみてください。
本書の中でも紹介した次の事実を日本人は直視すべきでしょう。

2006年10月10日。北朝鮮の核実験の翌日。
この日、キッシンジャー元国務長官と胡錦涛国家主席ら中国首脳の間で秘密会談が行われた。(これは月刊誌「中央公論」掲載の「拉致敗戦」のなかで一部紹介されている)
前日まで北京にいた安倍首相はこの事実を聞かされていない。キッシンジャーは安倍訪中と同時期に中国に入国しているのに、である。日本と米国は『同盟関係』にあり、中国とも『戦略的互恵関係』を確認したはずで、日米安保と対中ODAはその担保だった。
だが、日本側は両国政府からなにひとつこのような情報を伝えられていない。それには理由がある。彼らが語り合ったのは日本の核武装をどのように押さえ込んでいくのか、そして日本からいかにして北朝鮮再建のためのカネを供出させるか、という『日本処分』がテーマだったからである。以後6者協議のテーマは北の核廃絶ではなく、この方向に大きく変質していくのである。


敵国になり得る国・米国
青木 直人
PHP研究所 (2008/01)
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