森を見ることの重要性
読者の方から中国政府が北朝鮮の茂山鉱山の開発に乗り出しているものの、現実には北朝鮮側の事情でなかなか軌道にのっていないが、という質問を受けました。これについて解答しておきます。
タイトルに書いたように『木を見て森を見ず』ということわざがあります。
中国が従来の北朝鮮政策を一変させ、東北三省の再開発と北朝鮮投資をリンクさせ、同時に外交的には北を6者協議の中に取り込んで、米国と日本との正常化を後押しすることに乗り出したのは2005年のことでした。(『敵国になり得る国米国』参照)
茂山開発もその一環でした。とは言え、現実には北朝鮮経済の破綻で、交通通信インフラの未整備、資材の欠如、労働者の労働意欲のなさ、そして全土に蔓延する賄賂のひどさ、さらに代金回収の困難さと、ビジネス上のトラブルは頻発するばかりでした。これは今も変わりません。
こうした事態をみてとった中国の商務省(日本の経済産業省に相当)はたびたび北朝鮮貿易と投資に対して慎重に対応するように通達を出しています。中国の北ビジネスフィーバーは小泉首相の訪朝と共同声明で日本から北に膨大な援助マネーが入り、チャンスが到来したとみたビジネスマンたちの思惑もありました。また経済的に破綻した北にはなにを持って行っても売れるわけで、国内では在庫の山になっている衣類や食品、日常製品などが鴨緑江を超えて、北朝鮮国内に流れ込んでいる。日本で話題になっている食品公害の噂も聞こえてきます。
中国の北投資の狙いは単なる民間のビジネス以上に、国家戦略として、短期的な視点ではなく長期的かつ戦略的視点から分析すべきでしょう。現在中国は海外で活発に投資を急増させていますが、アジアにおいて、香港を除けば、最大の投資国は北朝鮮なのです。経済の崩壊した同国への進出の目的は資源の確保にあります。資源とエネルギーの長期的かつ安定的な確保は中国経済の命綱であり、そうした事情が近年の海軍力拡充の背景にもうかがえます。
ですから茂山の資源開発も見るべきは、(1) 開発期間が50年と異例なほど長期間であること (2)北の現状がひどいからこそ、中国は自国の国益上も、北の『改革』を真剣に考慮せざるをえないという切迫感があるということ この2点を重要視すべきではないでしょうか。金体制がどうなろうと、この契約は今後も約50年間も北朝鮮政府を拘束するのです。
今後、半世紀の間に金体制は間違いなく崩壊し、中国東北経済の下部構造に北朝鮮は組み込まれてゆく。見るべきはそうした中国の長期的視点をふまえた深謀遠慮なのではないのでしょうか。
尊敬する三浦小太郎さんが『声よ届け、波濤のかなたに!!』(沢村圭一郎氏主催)で「敵国になり得る国米国」を解説してくれました。
彼が『諸君!』(文藝春秋)で長期連載している書評は私の読書目録の参考文献のひとつで、毎号雑誌を手にするたびにまず最初にページを開いて目を通す記事のひとつです。読むたびに到底私の頭ではこの膨大な知識量に太刀打ち出来ないと深い挫折感に囚われるばかりです。「声よ届け」のなかで、彼がこう書いてくれていることに対して、筆者としてこれ以上の喜びはありません。
『本書は冷戦時代の日本保守の意識をそのまま持ち続けてきた日本保守政治の敗北過程であり、現在敗れつつあるのは決して左翼だけではなく、保守側の地盤沈下である』
『これはアメリカの裏切りを批判する本でも中国の脅威を指摘する本でもなく、なによりも日本の限界を提示し、そこから脱却すべき道を指し示そうとする本である』。
昨日もある著名な保守論客の方と食事をしたのですが、三浦さんが指摘してくれているような認識で一致しました。保守化なるものの正体は単なる左翼の自滅に過ぎなかったのではないでしょうか。やはり正確に情勢を分析して論じていくことが大事です。わたしも、近いうちに具体的なアクションをおこすつもりです。
また中朝関係を含めた半島情勢については来月にも、荒木和博氏とチャンネル桜の『爆弾!』で討論を予定しています。
注)三浦小太郎さんの解説「青木氏の著作を読む」は以下のアドレスでご覧いただけます。
http://6827.teacup.com/sawamura/bbs/17329
http://6827.teacup.com/sawamura/bbs/17330
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