毒入り餃子の経済学
中国公安当局が記者会見で正式に『毒物は中国国内で混入した可能性は低い』と発表しました。当然予想された発言です。メディアのなかには「実行犯を引き渡して幕引き」との観測が流れていましたが、私は「それはどうかな」という認識でした。
中国メディアの報道内容を見れば、明らかに『中国被害者論』が堂々と主張され、新華社ですら日本の報道を『拷問』と形容していたからです。こうなると、他者への迫害には無頓着だが、自己への批判は過剰なまでに被害性を言い募る『中華愛国主義』が商業倫理に優越することは火を見るよりもあきらかでした。
まず確認しておくべきは今回の公安部の発表は対日関係全体の文脈のなかで行われたものであること、狙いは4月の胡錦濤来日という10年ぶりの国家最高首脳のイベントを念頭において行われたものだということです。これから始まるのは毒餃子など中国食品の輸入問題は『事実の検証』ではなく、胡と福田内閣の政治的妥協として処理されるであろうということです。結論は『今後は気をつけてください。頼みますよ』という程度のものでしょう。
そうした「喜劇」を予想させるように福田首相は中国の発表を「前向きだ」と評価しています。福田内閣はなぜここまで中国政府に迎合するのか。
背景にあるのは日中両国のナショナリズムが和解してはいないという現実です。中国重慶で行われたサッカーでの日本人選手に対する大ブーイングは骨がらみの反日排外主義が草の根を覆う今の中国の姿を赤裸々に見せ付けました。当然日本でもこれに対して、中国に言うべきは言わなければならないという国民的常識は広がります。こうした事態こそ、今や両国貿易総額が2366億ドルと対米貿易額を抜き去り、対中輸出が1000億ドルを突破した財界が恐れる危険な要因なのです。昨年あたかも福田政権誕生に合わせるかのように財界の総本山・経団連は『中国との経済的つながりを強化し』『東アジア共同体設立にむけて一定期間内に方向性を出すべきである』と提言しています。
福田はそうした財界の声を背景にして、日本の対中ナショナリズムをなんとか沈静化させたいとしているのです。彼だけではありません。中国との新しい利権に首を突っ込み始めた中川秀直は小泉外交に対して『国民のナショナリズムを管理すべきだ』と口にした政治家として有名ですが、彼がいまや与党実力者にして、首相を生んだ清和会のニューホープであることに注目して欲しい。中川は北朝鮮との正常化を目指す「日朝友好議連」の幹部も務めています。一言で言えば、中国ビジネスにしろ、拉致問題にしろ、国民の正当な怒りやナショナリズムは障害にしかならず、その結果利権にもカネにならないのです。
彼らの最大の応援団が朝日新聞など「リベラル」なメディアです。中国に迎合していれば叩かれることはありません。世界にも稀な記者クラブの特権性に胡坐をかいている「ジャーナリスト」たちはこれほど政治的なのです。
戦後初めて日本人の正当な愛国心が中国の度重なる靖国神社参拝干渉によって目覚めた小泉時代。いまも中国がこの時代を『暗黒』と読んでいる事実は、彼らと『相手の嫌がることはしない』と公言する能天気な福田首相がなにを恐れているのかを暗示しています。
国がやらないのなら国民がやる。中国製品不買運動こそが最大の自衛策です。
4月、日本を訪問する胡錦濤主席は日本人のひややかな国民感情に迎えられるはずです。
それは人民大会堂で朝貢する政治家たちのお追従とはちがい、間違いなく日本人の対中感情なのです。
『つくられた友好』に国民はあきあきしているのです。
【書きました】
戦略情報研究所のニューズレター「おほやけ」に先日の王家瑞・中国共産党中央連絡部部長の訪朝時に、金正日労働党総書記が『中国を絶対に裏切らない』と発言した政治的な背景を連続して解説しました。中朝関係は確実に『変質』を始めています。
ニューズレター「おほやけ」
http://senryaku-jouhou.jp/MailMagazin.html
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