2008年5月記事一覧

益田にて

| | trackback(0)

所用で帰省しています。日本海の初夏の潮風に季節感が漂います。
私の故郷益田から県境を越えて山口県の萩に向かう際、車窓に流れる澄み切った海の風景に心が洗われる思いです。

(1)活字と違い、映像は怖い(笑い)。今日、チャンネル桜で各キャスターのコラムが放送されました。私は『仁義なき大放言』を担当したのですが、ネットの書き込みに『青木さん、疲れている?』とあって、ドキッとしてしまいました。手の内を明かすと、あの収録は火曜日27日の『桜プロジェクト』の『北朝鮮映像とインテリジェンス』の2時間近くの収録直後に撮影したものなのです。5時間もある北朝鮮の撮影ビデオを何度も繰り返し見て、必要な部分をカット,そこに取材した内容と解説をくわえてゆく。こんなことが何日も続きます。
特に桜視聴者は目が肥えているので、気が抜けません。しっかり裏づけをとった、しかもこれまで報じられていないファクトを、全体の構図をあきらかにしながら、提示していく。成功したかどうかの判断は見ていただいた方にお任せするしかありませんが、そんなことを心がけています。
ですが当然、そうなると、放送直前はしわ寄せが睡眠時間に及んでしまいます。あの日は4時間しか寝ていません(笑い)『疲れている?』。そうなんです。

(2)パートナーの櫻林さんはきゃしゃで、チャーミングな方ですが、凄腕の女性キャスターでもあります。それはそうでしょう、番組のパートナーが私と三輪和雄さんなのですから。今回もお世話になりました。
次回の第二回目は北朝鮮の庶民の自然な映像を紹介します。あの国では結局国民は外人を前にしては関わらないか、演技者としてしか振舞えないのです。
国交正常化さえすれば国民同士がもっと理解しえる。大嘘もいい加減にしてほしい。そんなことは取材をして言え!大工はいい家を建ててほしい、寿司屋はうまい寿司を握れ。そしてジャーナリストはあくまで事実を前提にして発言すべきである。

情報の交通整理

| | trackback(0)

例年に続き、今年も夏休みはなさそう。数ヶ月先のスケジュールを見て、あらためてそう実感。早々とあきらめています(笑い)。
今年ももう半年が過ぎました。本格的にブログは始めるわ、投稿動画には『出演』するわ、でこれまで以上に情報を発信してはいるのですが、それなりの弊害も感じています。
ネット情報は原理的には地球上どこでも見れるし、それはすばらしいことなのですが、当然ながら誰もが見れるものに秘匿性はないわけです。
取材していて、『書けるのはここまでだな』と見切るしかないテーマやインサイド情報があります。裏はなかなか取りずらいのですが、一方で、信憑性の高い情報ではあるのです。
ですが、それはネットでは書けない。匿名でならともかく、実名で立ち上げているブログにはそぐわないのです。
いまかなりショッキングな話を耳にしていて、事実なら政界は大揺れになるでしょう。
どこでどういう形でレポートするのか。情報の『交通整理』が必要になってきました。
ある程度クローズされた形の情報発信も考えざるを得ないのが実情です。

27日の桜プロジェクトでは前回書いたように西海閘門建設を巡る国際政治学について話しますが、それ以外に外人専用ホテルである高麗ホテルの監視体制、決して外人とは目を合わせようとしない北朝鮮市民の姿など、田原総一郎さんが報道しない『非友好的な北朝鮮』の姿を紹介します。
それにしても最近北朝鮮の資源を手に入れるため、正常化せよとの声が政界やメディアの一部からも高まりつつある。こういう政治家、識者は70年代、北朝鮮ビジネスに関わった日本企業がどれほど貿易代金を踏み倒され、いまもなお、関係者がほぞをかんでいる事実を知っているのかどうか。実事求是。彼らはまず、この処理のために三井物産が立ち上げた北朝鮮貿易団体『東アジア貿易研究会』に当時の実態をヒアリングしてから初めてらモノをいうべきです。
そのひとり、田原さんは『解説』します。『僕が乗ったピョンヤン行きの飛行機にはヨーロッパのビジネスマンがたくさんいた。北は孤立していない。制裁は効いていない』。小学生が遠足に行ったときの感想文がこれでしょう。
孤立していないのならなぜ昨年度の北の貿易額の70%が中国一国で占められているのか。まずこの事実に答えてほしい。
また北の資源開発に必要な資金と技術はどこから来るのか。北にはそんなモノはない。ないからこれまで開発できなかったのだ。今北はそれを外部に求めようとしている。だが機能不全に陥ったあの体制では外部からの輸血の効果はゼロである。開放当初の中国とそっくり、いやそれ以上に国内環境は最悪である。
だがそんな資金も技術もない北の資源に関心が集まっているのは米国との『和解』で国際的金融システムに加盟する可能性がでてきたこと、そしてさらに大きな好機が日本との正常化で生まれる『経済協力』のためなのだ。
だとすれば、カギは日本の世論にある。拉致に怒る国民の声こそが敵なのだ。田原はそうした国民感情をなだめすかすためにこそ存在している。田原総一郎の正体はハルメーンの笛吹き男である。

季節の変わり目

| | trackback(0)

寝ておりました
前回の『毛沢東と西郷隆盛』を書いたのは実は3日前、一昨日から体調不良でいくつかの仕事関係のアポを急遽取り消させていただいた。関係者の方々にお詫び申し上げます。今月は多忙でした。

(1)前回司馬遼太郎氏の著作のなかで、西郷さんと西南戦争について書かれた『翔ぶがごとく』には触れなかった。失礼だがこれは大多数の識者が指摘するように失敗作である。というよりも近代主義者だった司馬氏には西郷と言う人を尊敬する思いはあっても、その実像を理解しえる枠組みがなかったのだろう。
西郷とはなにか。ただ一言で言えば、星になった男である。全ての西郷論はここから出発すべきではないのでしょうか。

(2)櫻林美佐さんが先週の桜の報道ワイドウイークエンドのコラムの中で、この西郷伝説にふれていましたが、その櫻林さんと二回目の桜プロジェクトをやることに。27日(火)の午後8時から1時間半の放送です。今回は97年、金日成死去からちょうど3年目の喪に服していた北朝鮮を訪問した際のビデオを元に解説をさせていただきます。
そのなかに日本から北に拉致された田口八重子さんたちが最初に上陸した南浦港と西海閘門もあります。これは金正日が父親の古希祝いに建設したと言われていますが、そうならおかしい。自主思想の塔とか凱旋門など革命記念碑ならともかく、こんな実用性の高い港を父親のために建設する意味があったのか。86年、建設に関わった人民軍の膨大な犠牲を代償に、西海閘門は完成します。以後ここを通過して5万トンクラスの船舶が南浦港に入港できるようになったのです。ではなぜ突貫工事だったのか、なぜ5万トン船なのか。背後にあったのは現在同様に変動する東アジア情勢でした。そんな話をさせていただきます。

(3)桜も最近はユーチューブとかニコニコとかに投稿されるせいか、認知度が高まっています。残念ですが地上波の幼稚化、痴呆化はすすむ一方で、それだけに左右の政治的立場を超えて、硬質な報道が求められています。マスコミを批判するのは簡単ですが、これを乗り越えるには相当のパワーが必要です。ですが大手スポンサーがないということで、これほど自由な取材と発言を許されるものなのか、桜に出演させていただくたびに、そう実感しています。桜を『右翼放送』と悪罵する人たちは自分たちがどれほど自由に番組を制作しているのかを見せてください。
来週は火曜日放映の「桜プロジェクト」のキャスター、土曜日の報道ワイドウイークエンドで『青木直人の仁義なき大放談』、そして、週末の『討論×3』(崩壊の予兆か?中国の行方)に出演します。でもなぜ地上波はこういう専門家を集めて(タレントではなく)本格的なデスカッションをしないのでしょうかね。


「毛沢東と西郷隆盛」

| | trackback(0)

締め切り集中。
(1)来月発売予定の「表現者」に「毛沢東と西郷隆盛」を書きました。前号から連載中のコラムで、今回で2回目。
毛と西郷。一見なんの関係もないように見える二人が実はアジア近代史の地下水脈の部分で密かに合流していたのでは、というモチーフを活字にしたものです。日本の側からも日中関係史の見直しが必要です。「表現者」の自由な編集方針はいい。もう「左」だ「右」だと罵り合っている場合ではありません。というよりもそうした政治的パラダイムが現実性を喪失しているような気がします。同誌の課題はこの編集方針に賛同してくれる読者をどう育てるのか、だと思います。ぜひ、若い方々に読んでいただきたい。
同じく来月発売の宝島リアルに「阿Qたちの攘夷・魯迅の読み方」(仮題)を書きます。また「撃論」には「米中『安保』で窮地に立つ日本」を。
ブッシュ政権の北朝鮮テロ国家指定の解除が早ければ今月中にも行われるはずです。黒船がその姿を現しつつあります。さらに掘り下げて知りたい方は「敵国になり得る国 米国」(PHP研究所)を参考にしてください。

(2)胡錦濤の中国を批判するのはわかります。ですが、そこで「福島みずほ」を叩いても単なるフラストレーションの発散にすぎない。中国版ノーメンクラツーラ(赤い貴族)の「好朋友」が国際的なビッグビジネスであることに気付くべきです。

その中国で社会不安が醸成されつつあります。マグマは排外主義となって爆発するのか、それとも政府に向かうのか。結論を急ぐことには慎重であるべきですが、胡政権にとって北京五輪開催は諸刃の刃になろうとしています。

(3)NHKで司馬遼太郎さんの「坂の上の雲」が映像化されるとか。司馬さんの著作はほぼ全部読破しているのですが、なぜか人気本として名前が挙がるのは「燃えよ、剣」(土方歳三)とか「竜馬がゆく」(坂本竜馬)、あるいは「峠」(河井継之助)などの英雄物語が多く、それはそれで青年時代に貪り読んだものですが、面白いといえば断然「俄」です。浪速の伝説的侠客・明石屋万吉を主人公にしたこの小説の面白さは他に類を見ないほどで、私の愛読書のひとつです。司馬氏も楽しみながら書いているのがわかります。
(4)司馬氏と並んで読み漁ったのが松本清張でした。この人は短編がいい。読ませるのが「証言」と「張り込み」です。過去東宝で映画化されています。映画といえば、「黄色い風土」(講談社文庫)も、鶴田浩二主演で作品化されているのですが、残念なことにこれだけは見ていないのです。どこかで上映予定があれば一報ください。

ドイツ政府の英断

| | trackback(1)

「現在ドイツを訪問中のダライ・ラマ14世と会見した同国のヴィチョレクツォイル経済協力開発相が19日記者団に対して、「チベットで暴力が続く間は対中経済支援を凍結する」と表明した。ドイツはこれまで地球温暖化対策や環境保全分野を指定して、2007年度は6700万ユーロ(約100億円)を拠出している。開発省は3月のチベット騒乱以降、中国側と協議自体を中止している」。
(日経ネットより)

ドイツは言葉ではなく具体的な行為でチベットの自由化を求める人々と連帯を始めた。それは援助の蛇口を閉じることで、中国のチベット抑圧政策に変更を求めるものだ。昨今は米国の国務省中心勢力の中国への弱腰が目につくのと対照的にフランスやイギリス、そしてドイツなど欧州勢の人権外交が熱い。米国の場合はなんせ、あのブッシュ大統領の父ブッシュシニアが「五輪参加選手団の名誉団長」として北京に乗り込むという体たらくなのである。

そこでわが日本である。チベット弾圧について政府が具体的抗議をしたことはないし、そればかりか「五輪を支援する議員の会」なる中国ヨイショ議連まである。世界が人権弾圧と北京五輪に疑問の声を上げ始めているのに、日本では国会議員250名弱が与野党を問わず、「五輪を支持する」と言うのである。
おまけにこれを中国サイドと一緒に、立ち上げたのが衆議院議長である河野洋平なのだ。彼は胡錦濤国家主席との間で議連の設立を彼が会長を勤める国際貿易促進協会のビジネスとバーターで請け負ったのだ。「会員企業の中国ビジネスをよろしく」とお願いしながら。

ではドイツに比較して日本の援助は少ないのか。とんでもない。ODAだけでドイツの5倍以上の援助を行っている。それ以外の援助を含めれば10倍近くも達する。
最近ネットでODAについて意図的な書き込みが目立つ。まずODAは6兆円ではなく、3兆円だと言うもの。ウソである。日本の対中援助には二カ国間援助とアジア開発銀行など国際団体を通じて迂回融資の二種類がある。
前者にはODA(これは外務省管轄)と国際協力銀行が融資するアンタイドローン(いわゆる資源開発への融資・資源開発ローンと呼ばれる)のふたつがある。
ODAは確かに3兆円強だが、後者の資源ローンも3兆円弱あって合計で6兆円を突破する。これが明々白々な援助総額であり、書き込みはわざと後者の数字を指摘していないのである。金額を少しでも少なく見せようとの浅智恵である。
また日本のODAは円借款が中心で、金利を取っているとの批判もある。これも大笑い。30年間で1、2%台のローンなどインフレを考慮すればただ同然であり、そもそも日本のODAは円借款中心。理由は返済をさせる事で自助努力を促進していこうと言う援助哲学によるものだ。中国だけに金利を取っているわけではない。全ての被援助国がこうなのだ。

この二カ国間の援助が6兆円を突破し、さらにアジア開発銀行と世界銀行からの迂回融資を日本の拠出額(約16%)で割ると1兆4千億円となる。合計7兆4千億円!
ちなみに日本のODAだけでも中国が世界から得ている公的援助の60%を占めているのだ。繰り返す。日本一カ国だけで、だ。この膨大な金額に比較すればドイツの援助など露骨に言えば可愛いものである。

だがそれでいて、政治の側からは中国に対してドイツのようにチベットへの弾圧に抗議して、援助を停止せよとの声はあがらない。自民党からも、公明党からも声はなく、野党第一党の民主党も社民党、共産党もひたすら沈黙するばかりである。
援助金とはなにか。我々の血税である。だが国民の代表たる議員はドイツとちがい、中国については口ごもるだけなのだ。
普段あれほど「ドイツに学べ」と叫ぶ朝日新聞も何も書こうとはしない。彼らがしたことは中国の対日情報工作のひとつであった映画「靖国」の謀略的本質を「言論の自由」と言う手垢のついたイチジクの葉で覆うことだけだった。
中国の世界的な情報戦略が活発化していることは情報通なら誰でも知っている。だがそれを知りながら、朝日新聞は映画「靖国」問題を「右翼と国会議員の圧力」に仕立てあげた。情報分析のお粗末さと政治性は築地「小学生新聞」と呼ぶレベルである。だが議員の政治的圧力を言うのなら稲田朋美、有村治子両氏のような女性一年生議員の「政治的圧力」ではなく、元自民党総裁にして、現衆議院議長・河野洋平が中国五輪支援のために暗躍したその「政治力」こそ問題にすべきではないのか。

フリーチベット!対中国援助をストップせよ!
ドイツの英断に学びたい。これこそが外交である。長野の怒りを援助中止につなげることが大事なのだ。それはウソにまみれた「友好体制」を内部から変革することなしには成功しない。ドイツと日本はこれほど違う。今現在も日本国中、一木一草に至るまで欺瞞の日中友好が闊歩しているのである。

追加
最近いろんなところで講演をします。フェイスツウフェイスのコミュニケーションはいいですね、情報感度の高い方々からの依頼なら大歓迎です。

再びキャスター

| | trackback(0)

27日(火)の夜8時から1時間半、二回目の「桜プロジェクト」のキャスターを勤めます。今回は私が過去某国を取材した際の秘蔵(?)映像を紹介しながら、解説をさせていただきます。前回報じたアジア開発銀行と日本のODAが漢民族のチベット、新疆の経済進出のためのインフラ整備に利用されているという話は、幸いにも好評でした。
日本の中国援助の中味をもう一度洗い直して、そこから今も中国に対する世界最大の援助国である日本の中国外交の全体像を検証する必要があります。
チベットはチベット、東トルキスタンは東トルキスタン、台湾は台湾と個々の運動が別れているのはいいことではないのです。そうした運動をつなぐ一本の線が必要なのではないでしょうか。その日本からの援助ですが、日中互恵関係の掛け声のもと、事実上ODAが「復活」中です。
今年度で廃止されるODAは円借款だけ。無償援助も技術支援も廃止になってはいません。
なかでも無償援助の「円借款化」がすすむ可能性がある。無償援助はタイドといって、ひも付き。必ず日本企業が受注することになるのです。
援助再開のからくりは日本企業を抱き込むことにあります。反対の声を封じるのが目的です。
朝日新聞を読むと、中国環境支援歓迎の記事が目に付きます。環境案件は登小平の次女登楠がキーマンです。かつて、三女の登溶が上海援助に関する実力者だったことと重なります。権力者とODA.朝日新聞と「朝日ジャーナル」は過去、韓国やフィリピン、それにインドネシアの援助腐敗には「正義のペン」をふるったものですが、それはそうした国が小国だからに過ぎません。それが証拠に中国疑惑には決して触れようとはしない。「ジャーナリスト」たちの「正義のペン」が大国中国に向かうことは今後も期待することはできないでしょう。
その「朝日ジャーナル」の編集長が筑紫哲也でした。この男が日本記者クラブから賞をもらったとか。二回笑いました。いまどき「記者クラブ」、そこから褒められる筑紫哲也。言論界の談合を見る思いです。自己検証なき戦後の言論空間の腐臭が漂います。

機会があれば、市民の方々や民間団体と一緒に「中国援助見直し」の集会を開いてみたいと思っています。ご意見をおよせください。

九段会館にて

| | trackback(0)

GWにチャンネル桜主催の討論会に連日パネラーとして参加した。参加された方、主催関係者の方々にお礼を申し上げます。数が多くなかったのは残念でしたが、それだけに参加者とパネラーの直接触れ合う機会があればよかったと思います。これは次の機会に。

討論会自体は不満の残るものだった。なかでも二日目はそもそも議論自体が成り立たない。それは『リベラル』とされる出席者の方と『現状認識』がかみ合わなかったからである。
こういう体験は過去にもあった。ある左派系の軍事評論家の講演会で講師が激しく日米安保の「再定義」を批判したことがある。それはそれでいいのだが、問題は中国の軍事的台頭という現実があり、その側面に触れない現状『分析』は一方的かつ、不公平ではないのか、と私が質問した際の彼の発言だった。
『それはそれとして、でも今回の日本政府の行動は憲法違反です』と不愉快そうな返事が返ってきただけだった。主催者側もこれ以上の質問を打ち切った。
彼が憲法を擁護するのは構わない。だが、そういう自身の党派的な立場を優先させて、講演参加者が最も関心をもつ『軍事評論家』としての地域の専門的な分析がないがしろにされた印象は否定できなかった。だがそれでいいのか。彼は軍事分析のプロなのだ、法律家ではない。私はあの場に憲法第九条の解釈を聞きに行ったのではない。ジャーナリストや評論家はまず事実を前提にして論を進めるべきであって、逆であってはならないと思う。理念は現実から構築されるべきなのだ。

九段会館の講演ではファクトが大前提となって、論争が行われるべきだった。私たちは「人間はいかに生きるのか」とか「私の人生哲学」など抽象的で哲学的なテーマを論じようとしていたわけではないからだ。討論のタイトルも「胡錦濤訪日、北京五輪、東アジア大討論」と具体的である。だがそれは成功しなかった。そもそもパネラーそれぞれの現状認識が違いすぎるし、総じて貧弱だからだ。
その結果論議は揚げ足取りの終始した。
「左」の論者からは中国のチベット侵攻を問題にするのなら、米国のイラク侵攻はどうなのだ、という声が上がった。それ自体は問題ない。だがそれを言うのなら、そもそも侵略と連帯はどう違うのか、具体的状況において両者の間に明確な区別が出来るのかどうかという根底的な論議に話を進めるべきなのだ。そうすれば、竹内好が日本のアジア主義の中で提示した日本近代のアポリオが浮かび上がるし、日本とアジアとのかかわりを明治にさかのぼって、論じることが可能になる。そうしてこそ、文字どうり「左右」の間の「東アジア大討論」になりえたのである。
あるいはあるパネリストが肯定的に語る「東アジア共同体」をテーマにするのなら、現実に中国ははずせない。そうなら、現在、中国が東アジアの共同体メンバーに対して行っている経済的政治的覇権をどう見るのかが次に論じられるべきである。
人間サファリツアーという聞きなれない言葉がある。中国と北朝鮮の国境を流れる鴨緑江。この川を遊覧する中国の観光船から対岸の北朝鮮に向かって、中国人観光客が食料や生活物資を放り投げるのである。
それを腹をすかせた北朝鮮の「人民」が争って取り合う光景を皆で鑑賞するツアーなのである。この企画大人気だという。露骨で、傲慢な目を背けるような「観光」である。これでは北朝鮮住民は上野動物園のサル山のサルと変わらない。
この現実についてアジアとの「国境と民族を越えた」「共生」を唱える地球市民たちは抗議すべきである。これは許される行為なのかどうか。「東アジア共同体」の出現は中国の経済的台頭とメダルの表裏である。だが中国の経済大国化は周辺の小国や国内の少数民族との「共生」ではなく、彼らに対する大国主義的侮蔑と蔑視感情を醸成しつつある。これこそが現実なのだ。チベット蜂起はそうした中国人の民族浄化に対するチベット人の人間としての怒りの爆発だったのだ。
具体的テーマは抽象的にではなく、具体的に論じられなければならないと私は思う。ジャーナリストがそれをしないで誰がやるというのだろう。
「人間ツアー」的なるものはミャンマーでも、モンゴルでも、そしてチベット、ウイグルでも普遍的に観察される。中国人は彼らの文化や資源や誇りまで奪おうとしている。だから国際社会は告発したのだ。この事実に目をふさいだ東アジア共同体論争など無効である。
だが、「中国人を批判するな」と発言する方がいた。残念である。地下で魯迅は泣いているだろう。「阿Q正伝』は彼が自国民に対する絶望と怒りとそして愛情と希望をこめて書き上げた書である。
中国人の反省のなさ、「精神的勝利法」と言う名の自己満足、上から扇動されれば、何度でもたやすく乗せられてしまう主体性の欠如、そしてそんな阿Qの処刑を見物する大衆たちの存在。彼らの視線のなかに秘められた好奇と残忍性こそが「人間サファリ」と重なりあう。魯迅の愛国心は集団で赤旗を振りまわすことではなかった。否、そうした「中国人」の存在にこそ、怒りのまなざしはむけられた。中国人の中にある阿Q精神こそが彼の敵だったのである。「中国人を批判した」人物。それが魯迅だったのだ。
魯迅はこの小説を「未来の子供たちのため」に書いた。中国人よ、変わらなければいけないと。それが彼の「愛国の作法」だったのである。魯迅は間違いなく本物の愛国者である。
私は学生時代に魯迅と出会った。彼の選集も揃えた。小説はうまくない。ひたすら重い。個人的には「故郷」が好きなのだが、やはりそう思う。その魯迅が同志であった内山完造を通じて西郷隆盛に関する著作を集めていたという(「橋川文三選集」)
論ずるべきはこうした歴史的事実である。日中両国の近代史が「野蛮な日本軍国主義」と「中国人民の闘争」だけだったとされては適わない。そんなことを思いながら私はあの日、演壇にいた。

東アジア激震

| | trackback(0)

今年の初めに今年は東アジアの動向が注目される1年になると予想しましたが、まだ1年の半分も経過していないのに、様々な動乱の兆しが発生しています。
朝鮮半島では米国の北朝鮮テロ指定解除が近づいているし、それと平行して金政権の内部から崩壊の足音が聞こえてきます。日本との関係で言えば、日本人拉致問題が大きな転機を迎えるはずです。

昨日の調査会の緊急集会のあと、親しい知人と会食した際にも話したのですが、拉致問題に対するこちら側の最大のアキレス腱は正確な情勢分析が出来ていないことにあります。
私が『救う会』全国協議会の『情勢分析』に不満なのは、関係各国の動向をリンゲージして読み解こうとしていないことなのです。その結果運動方針が的外れになりがちで、失ってしまった膨大な時間の大きさに唖然としてしまいます。
今行われているのは東アジアの『外交』なのです。当然関係国の思惑と外交関係を重ね合わせていかないと本当のところはわからない。中でも中国の思惑が正確に理解できていないと、はちゃめちゃな結論になってしまいます。

果たして中国政府は『拉致問題で共闘しえる相手だったのか』。この総括はできているのかどうか。またブッシュ政権は本当にライスとヒルだけが主導して、大統領は勝手にやらせているだけなのか。米国のテロ指定解除はなぜ行われようとしているのか。誰が考えても中国ファクターの存在がその理由なはずですが、なぜかそこには触れようとしない。

『救う会』は米国に、中国に、と各国を行脚した。だが米国を除けば、中国での行動については詳細をあきかかにしていない。これはなぜなのか、どうしてなのか、と書けば桜井よし子さんに似てしまうのですが、ここがわからない。昨日の荒木さんの「決起」に続いて、私もこれからこの場を借りて疑問点を紹介していきたいと思っています。それは質問であり、疑問であって、誹謗中傷ではないことを最初にお断りしておきます。

追加
①四川地震、このままで行けば暴動の可能性もあります。余震が繰り返されれば、倒壊はさらに急増します。四川は99年から始まった西部開発の中心です。
それだけに手抜き工事がごろごろあるのです。
②昨日この地震の件で東スポからコメントを求められました。あの東スポです。これ以上は書きません。私の近年の感動本は『1976年のアントニオ猪木』(柳澤健・文藝春秋)でした。今日は『女性セブン』など幾つかの週刊誌からも。うーん、チャンネル桜だけではいかんな(笑い)。

調査会の旗

| | trackback(0)

(昨日、特定失踪者問題調査会の緊急集会がありました。荒木代表が「拉致事件の本質と解決への道」と題して救援運動を巡るさまざま諸問題について発言をしています。詳しくはネットでご覧ください。
以下の原稿は荒木さんが5月6日の「調査会NEWS625」に発表した「救出運動は政府と一体化してはならない」を読んだ後に書いたものです)

荒木和博特定問題調査会代表の声明を読んだ。極めて原則的で、真っ当な発言であり、私はこの声明を100%支持します。
ここで多少、荒木さんとの最初の出会いについて触れておきたい。私がそもそも米国と中国の関係の絡みのなかで、朝鮮半島動向を分析したのは5年前に上梓した「北朝鮮処分」(祥伝社)が最初である。以後「拉致処分」(ビジネス社)「敵国になり得る国米国」(PHP研究所)と続く。

正直、私の本の中ではこの種の朝鮮半島モノの売れ行きあまりよくない。だが情報関係者や、拉致問題の当事者らの間では視点が新鮮だったせいか、割と話題になり、彼らが主催する勉強会や市民向けの講演会などに時々は呼ばれるようになったのである。そんなころ、荒木さんから連絡があった。
「新鮮な視点で感動しました。ついては一度お会いできませんか」というご連絡をいただいたのである。彼はこのようにいつも謙虚である。

で、飯田橋のエドモンドホテルの1階の喫茶店で始めて名刺交換をした。その際、荒木氏から「北朝鮮処分」のなかで触れた幾つかの箇所について掘り下げた質問があった。通常なら答えない。筆者にとって書いたものがその段階では公開可能なギリギリの内容だからである。だが、私はこのときだけは例外的に禁を破り、オープンに取材の裏話をあきらかにしたことをいまでも記憶している。理由はわかっている。それは荒木氏の拉致問題解決にかける情熱が半端なものではないことを知っていたからだ。

荒木氏は奥様の荒木信子さんと共著で「親日派のための弁明」(草思社)を翻訳し、監修している。この本は売れた。そして印税も入った。そしてそれはすべて特定失踪者調査会の設立資金に当てられたのである。それだけではない。そもそも10年以上も前に、彼が拉致家族救援組織を立ちあげた主要メンバーであったことは誰もが知っている。映画「めぐみ」を見ていただいた方はお分かりだと思う、自民党本部で野中広務幹事長(当時)に抗議した若き日の彼の姿が映っている。

6年前の9月17日。拉致は世間に認知された。「救う会」など救援組織も社会に認められた。だが闇に捨てられたままの人たちがいた。それが「特定失踪者」と家族の方々だった。その現実を前にして、荒木氏と彼の同志たちは再び最も困難な戦いに身を投じたのである。それは先の見えない暗いトンネルの中に向かって進むようなものだったはずだ。そうして生まれたのが特定失踪者問題調査会だった。

私は彼らの存在と戦いを誇りに思う。「いかなる困難があろうとも全ての日本人を奪還し助け出す」。調査会の掲げる不屈の闘いの旗こそすべての日本人の誇りである。今後も私にできることはなんでもやる。
最後に、これだけは書いておかねばならない。拉致で名をあげて上に向かって「堕落した」人たちがいる。だが、凍土の国に閉じ込められたままの同胞たちは決して彼らが世に出るために存在しているわけではないのである。自明のことではないか。





荒木和博BLOG
「救出運動は政府と一体化してはならない」
 http://araki.way-nifty.com/araki/2008/05/post_561c.html
「本日の集会レジメ」
 http://araki.way-nifty.com/araki/2008/05/post_3f34.html

「買弁」たちの72年体制

| | trackback(0)

福田総理が早くも8月8日から始まる北京五輪開催式への出席を示唆している。それでいてチベット問題についての発言はいたって「穏便」である。例の相手の嫌がることはしない」という「高度な外交戦略」(笑い)なのだろう。小学生のような男である。だが、マスコミの福田批判は表面的なものにとどまっている。彼の対中外交の主要ブレーンが中国シフトを本格化させている東芝の取締役であり、同時に元中国大使の谷野作太郎である意味を深く検証しようとしていないからだ。
内閣だけではない。国会でもチベットへの弾圧は話題にもならないし、抗議声明すら出てこない。それどころか、衆議院はあの河野洋平が議長の席に座っている。朝日新聞の大好きなあの河野である。彼はなにかというとすぐに中国韓国に謝る「良心的な」政治家だし、おまけに憲法第9条遵守の「リベラル」でもある。朝日はこんな河野を持ち上げる。大笑いである。ウソも大概にせんか。
このオトコの正体はこうである。一昨年12月彼は中国貿易ロビー「国際貿易促進協会」(国貿促)の新しい会長に就任した。同会は過去日本共産党と中国共産党の間の資金回流のパイプ役だった親中組織である。
会長就任は橋本竜太郎前会長(元総理)の死去に伴うものだったのだが、大問題なのはこのとき、河野が国貿促の会員企業の中国ビジネス参入とひきかえに、中国側からのある依頼を受諾していたことにある。それが世界に日本の人権意識のなさを大宣伝した「北京五輪を支援する国会議員の会」設立だった。河野議長が音頭をとり、議員を口説き、中国大使館も、王毅大使(当時)以下、大使館スタッフが直接電話で、あるいは議員会館の部屋で個々の議員に、または秘書に参加を要請した。
こうして国会内最大の249名もの会員数を誇る議員連盟が誕生したのである。世界中どこを見渡しても、どこにもこんな売国議連は存在していない。中国対日工作の見事な勝利である。こうした経過をみれば、なんのことはない、「リベラル」で「誠実な謝罪を続ける」河野洋平の正体とは実は北京政府の「買弁」なのである。
彼は「友好」の美名を掲げて、対中ビジネスをバックアップ、その代償に日本の誇りとチベットの人権を売ったのだ。
朝日がこうした事実に触れない理由がお分かりだろう。「リベラル」を売り物にする朝日新聞が持ち上げる政治家の裏の素顔を見せるわけにはいかない。客(読者)が離れるからだ。
いまや彼らの主張する「リベラル」と言う言葉からは古ぼけた教条と党派性しか感じられない。
メデァイには他にも「買弁」がいる。「ジャーナリスト」田原総一郎である。彼は露骨なまでにチベット弾圧を擁護し、中国ODA批判に噛み付き、自分の番組に中国情報機関の関係者を堂々と出演させた過去をもつ。
人は田原を電波芸者と揶揄する。だが正確には胡錦濤の幇間(タイコもち)と言うのが正しい。
この田原、これからが出番である。胡錦濤が彼に期待しているのは五輪で反日排外主義が爆発した際、反発する日本の世論を「なだめること」、そして「日朝正常化」のための雰囲気づくりである。田原の作ろうとする「世論」の中味に注目していて欲しい。これこそ中国発・対日情報戦なのであり、北京が日本になにを求めているのかのバロメーターになるからだ。田原のバックにいるのが3月の全人代で引退したばかりの唐家セン元外相(前国務委員)と彼のネットワークである。
反米が親中に転じるメンタリティ。その心理構造は「日本軍国主義」に反対した「リベラル」な「自由主義者」たちがより残酷なソ連スターリン体制を擁護した歴史と重なりあう。高市早苗議員を「あんたは何も知らない」と罵倒した田原こそ、実は過去の歴史から何一つ学んではいないのである。米国が帝国主義だというのなら、中国もまた社会帝国主義であると私は思う。



北京五輪後に何かが起こる
8月23日、発売

アーカイブ

BOOK

敵国になり得る国・米国

中国の黒いワナ (別冊宝島Real 73)

誰も報じない中国の真実 (OAK MOOK 180 撃論ムック)

ニッポンの恥! [別冊宝島Real] (別冊宝島Real 75)

最近のトラックバック