やがて北朝鮮の政変が始まる
金正日総書記の健康異変はじわじわと関係国の北朝鮮外交に影響を及ぼし始めています。残念ながら日本では事態を北朝鮮内部の問題、あるいは南北朝鮮に限定したテーマであり、わが国とは直接には無関係であるかのような雰囲気が一般的です。
ですが最低でもこの事件が拉致問題とどうつながるのか、どういうインパクトを与えるのか、程度のことは真剣に論じられるべきです。北朝鮮有事は間違いなく拉致運動に連動してくるからです。
今回の「金倒れる!」報道で注目すべきは米中両国政府の間で、すでに北の最高機密に関する情報交換体制が現実にオペレートしているという事実です。彼らは「金の容態は重症である」と判断し、北朝鮮有事をどう管理するのかに関心を集中しています。日本にもいずれ米国政府から正確なブリーフィングのための特使が派遣されるはずです。
その点で、太陽政策の尻尾を引きずる韓国政府の「北情報」にはオブラートがかかっている。それゆえに、韓国情報を鵜呑みにしてはならない。いまや動き始めた米中の朝鮮半島における危機管理体制こそ拙著「拉致処分」「敵国になり得る国米国」のなかで一貫して指摘してきたことであり、今回の事態はその最高のモデルケースになりつつあります。関心のある方はぜひ上述の二冊の著作を読んでいただきたい。
私の目には今回の事態は75年の文化大革命末期、中国において「偉大な領袖」毛沢東がほとんどメディアに登場しなくなり、同時に中南海の内側では、毛の夫人・紅青らを中心にした文革極左勢力と、彼らを「共産風を吹かせている」と反論した周恩来・鄧小平ら現代化勢力との暗闘が本格化した時期と重なり合います。
左派は毛沢東の意向をかざして、精神主義的な継続革命を叫び、現実派はそれこそが国を混乱に導くものと警戒する。
前者の代表が張春橋の「プロレタリア独裁」論であり、後者が周恩来が全人代で発表した「4つの現代化」構想でした。
こうした路線闘争は北でも当然、存在しています。ですが、金正日の独裁的な存在がそれを表面化させなかったのです。だがいまや先軍政治の行き詰まりは誰の目にも明らかで、ほからならぬ同路線の主役である人民軍内部にも亀裂を生み出しています。
毛がメディアに登場しなくなったことで、当時大学生だった中国人の友人は「確実に政変が近い」と実感したと振り返ります。今にして思えば、毛の衰えが彼の死の直後勃発した文革派追放(10月政変)を準備していたように、北でも先軍政治がなんの展望もないまま、金正日の容態悪化だけが進行し、権力の空白が本格化しています。
最高指導者が言葉を失い、メディアから姿を消すということがいかなる政治的影響を与えるのか、それは、田中角栄が脳梗塞で言葉を失い、それを期に竹下登氏の奪権が成功したことからも理解できるはずです。だからこそ、先を読まなければならない。
北朝鮮に改革派の「朴正キ」が登場し、労働党政権の延命のために、一定の開放を始めたとき、米中韓ロの関係国はこれを一斉に歓迎、日本からの大規模な援助を強力に要請してくるでしょう。(私がこれが最も現実性をもったケースだと考えているが、当然そうなれば、南北の統一はない)
そうした事態に直面した場合、日本政府がこれに抗するには相当の踏ん張りが必要で、だからこそ、日本国民は「全ての日本人の解放なしに援助も正常化もない」との不動のコンセンサスを何度も確認しておかなければなりません。しかし、いまのところ、そうした話題すらどこからもでていない。これはまずい。同胞奪還のチャンスは金体制の動揺の際にしか存在していないのです。このリアリズムを決して決して忘れてはなりません。
« 講演のお知らせ | HOME | 金正日は「死んだ!」»
トラックバック(0)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: やがて北朝鮮の政変が始まる
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://aoki.trycomp.com/mt/mt-tb-aoki.cgi/77






![ニッポンの恥! [別冊宝島Real] (別冊宝島Real 75)](http://ecx.images-amazon.com/images/I/31p9qvqPMcL.jpg)





