ラッシャー木村さん、お疲れ様でした
吉村昭さんの「羆嵐」(新潮文庫)は、北海道の天塩山地にある開拓集落で大正4年に発生した羆によって、6人もの男女が食い殺された事件を小説化したものです。このなかで銀四郎という老練な熊打ちがたった一人で、羆に立ち向かい、身長3メートル、体重400キロの巨大な羆をわずか2発の銃弾で撃ち倒すというシーンがあります。
一読後、これそこがプロの仕事なのだと感動させられました。
私はこういう仕事師が大好きで、脱線しますが、プロレスラーでも多彩な技を繰り出す選手よりも、「アイアンクロー」のフリッツフォン・エリックとか「アキレス腱固め」の藤原義明なんかのような、これ1本という選手のほうに魅力を感じます。
(ラッシャー木村さんも頭突きがよかった。あれ1本でレスラーの凄みが伝わりました。お疲れ様でした。謹んでご冥福をお祈りします)
で、私もジャーナリストとかアナリストとか肩書きはいろいろですが、日本を取り巻く情勢を正確に読み取って、これを分析し、そして今後の見通しをあきらかにしてゆくのが商売です。これが外れたのではどうにもならない。
正確に標的を射抜くことが大事なのです。
昨年の総選挙とその後の政治の混乱について、政権直後に、私の予想を話したり書いたりしたのですが、結果がほぼ的中しているせいか、専門家の方たちやNLCの会員の方から今後はどうなるのか、と少なくない質問が寄せられています。
8月の選挙直後の予想は岡山のブログに掲載していますが、それらを含めてまとめて一挙掲載(笑)。参考にしてください。
いずれもブログか、講演での発言です。
●「選挙の結果を見れば民主党が勝ったのではない。自民党が決定的に負けたのだ。今後自民党は混迷する。党内に政策の一致がないし、(民主党を倒せるだけの)策士が不在である」(ブログ・2009年8月・以下同)
●「民主党のアキレス腱は鳩山総理の発言のぶれである。対米関係は相当ギクシャクするだろう。日米安保の実効性が問われる事態が続発し、日米安保の混乱とは逆に米中関係はさらに強化される」
(「天安」事件を受けて、アジアを歴訪中のクリントン国務長官の日本滞在はナントたった3時間、一方、中国は5日間です。いまや米国の軸足がどちらを向いているのか、これほど雄弁に語る外遊スケジュールはないでしょう。
CCTVが映す米中会談でのヒラリーのうれしそうな笑顔がホワイトハウスの本音を示しています。彼女は日本では笑顔ひとつ見せませんでした)
●「官僚政治打倒を呼号する政権は官僚と相当ギクシャクする。・・・
政治家と官僚の不毛な消耗戦になりかねない」
(仕分け作業にはしゃいでいるのはいまや一部のテレビだけ。正当な官僚批判は必要だが、高飛車で反論を許容しない紅衛兵的な「つるし上げ」は政治家と官僚だけではなく、国民の間に政治的アパシーを拡大させるだけです。
阿Q正伝を読んでほしい。そして自問してほしい。絶対的な正義を錦の御旗にして、阿Qの処刑を楽しそうに、眺める民衆の姿とあなたが重なっていないかと。幹部に全共闘世代が多い民主党。彼らはまず文化大革命の総括から始めるべきでしょう)
●「民主党の最大の弱点は小沢の存在の大きさである。彼が病死、引退、暗殺という事態になれば、一気に党内の求心力は失われるだろう」
(民主党は当初は鳩山小沢の金権体質を問題にされ、次に普天間や宮崎口蹄疫問題で政治的能力に疑問符をつけられた。しかし、衆議院での300議席は圧倒的である。民主党は任期いっぱいまで解散はしない。つまり、いかように国民が愛想をつかしても、民主党政権は民意とは別に今後も続くのである。
これは危険な兆候である。選挙で示された民意ではなく、いまやテロこそが国民の意志を体現しているという逆説が生まれようとしている。
明治時代、大隈重信の売国外交を粉砕したのは議会ではなく、玄洋社社員・来島恒喜の投じた1発の爆裂弾だった。国民は愛国者・来島のテロをこぞって称えた。
いまの時代に、こうした情勢が発生するかもしれないという危機感すら持たないのなら、「識者」たるもの言論人の看板を下ろすべきである)
●「体制の危機はまだ起こってはいない。だが政治の危機は始まった。後世の歴史は2010年をこのように振り返ることになるでしょう」(ブログ・1月)
●「これから始まるのは大いなる混乱です。自民党の批判として民主に票が行った。いま民主党が支持率を低下させていても、それが自民党には向かっていない」 (2010年1月・女性塾)
●「2大政党は機能不全に陥っている。国民の政党と政治家不信と侮蔑感はさらに高まり、7月の選挙は最低の投票率になるだろう。私は政治テロの可能性を否定できない」(ブログ)
●「単なる保守には日本と米国の動きしか視野にない。6者協議を主催した中国、その中国と米国の関係をどうなっているのですかと私は一貫して問うてきました。米国の北朝鮮テロ国家指定解除のその日までブッシュ幻想が彼らを呪縛し、多国間のシビアで、リアルな現実の情勢が丸ごと理解されることはなかったのです。・・これで単なる保守はサヨクの単細胞ぶりを笑えるのか。・・
保守はいまや保守すべき理念を巡り、分解を始め、さらに情勢分析の主観性で時代から取り残されようとしている」(ブログ・2008年11月14日)
(これは南北朝鮮の軍事的緊張の高まりの今こそ、念頭においてほしい)
最後に宣伝です。明日発売の「SAPIO」(小学館)に中国に対する「ODAなきODA」の実体と環境支援がスタートすることを書いておきました。
数日前、日中韓の3カ国大臣の環境セミナーで日本側から1兆7000億円もの黄砂対策への財政支援が発表されました。事実上の経済支援の再開です。
わたしはこれまでいやになるくらい「ODAが環境支援と姿を変えて復活する」と
いい続けてきました。この事実はブログやNLCの読者からすでにご存知なはずです。予想どうり、ついに公的支援が再び始まります。
ですが、いずれにしても、こんな金額ですむはずがない。この3,4倍は想定しておいたほうがいい。
民主党政権で大々的な朝貢外交が本格化します。
日本を救うのは、怒れる国民の常識とナショナリズムだけなのです。
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