島根県益田市

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青空に入道雲があざやかです。島根県の益田に帰省しています。

高橋和己の名作「邪宗門」の冒頭はこんな書き出しで始まります。
「最初、なんの変哲もないプラットホームに降り立ったとき、透明な空の輝きが少年の胸をうった」。
「邪宗門」は「ひのもと救霊会」という新興宗教組織の拡大と壊滅を描いた小説で、大学生時代に読んだこの作品が、高橋文学の中で私は一番好きです。その一因は、冒頭のこの数行の描写が故郷の益田市内の各駅のそれに似ていて、強く印象に刻まれているからでもあるようです。
都会の駅とちがい、地方の駅(「邪宗門」も益田もいずれも山陰本線が走っています)は本当になにもなく、ただただ単線のレールだけが延々と続いているだけなのです。

益田は海あり、川あり、山ありで、さらに近隣には温泉がいたるところに湧いています。市内を流れる高津川は日本で唯一ダムがなく、しかも水質の透明度は四国の四万十川よりも上で、掛け値なしで、日本一きれいな川なのです。
この時期はいたるところで鮎釣りの太公望が竿をうまく操りながら、友釣りを楽しんでいます。鮎は本当に旨い。ぜひ宅配便で天然の益田川の鮎をご賞味ください。
高津漁協に依頼すればOKです。

帰省中に、一度は夜釣りに行くつもりですが、実はこの絶好のポイントである高津川河口付近は北朝鮮の工作員の上陸ルートとして知られたところで、私も中学時代、友人とチヌ(関東ではクロダイ)をよく釣りに行っていた場所なのでした。

いまから37年前の春、益田からある女性が突如姿を消しました。彼女の名前は益田ひろみさん。益田市と同じ「益田」姓の方で、北朝鮮に拉致された可能性が高い特定失踪者のひとりです。福原慎太郎市長も以前からこの問題には強い関心をもっていて、「しおかぜ」に救出を訴える収録を終えたばかりです。益田市のHPにも彼女に関するコーナーがあります。訪問してみてください。
(益田市:http://www.city.masuda.lg.jp/soshiki/177/detail-7396.html

益田ひろみさんの実家の周辺は私もよく知っているところで、目の前を高津川の清流が流れています。川は山陰の小京都といわれる津和野からこの青原を通り、日本海に注いでいます。宮本常一さんの「川の道」(八坂書房)によれば、高度成長によって陸路が整備(舗装化と高速道路化)され、大量輸送が可能になるまでは、高津川を使って中国山地の木材が益田に運ばれ、そこからさらに海運で瀬戸内海や大阪に送られていたのです。文字どうり、「川」は「道」だったのです。

ですが、こんな5,60年くらい前のことですら、私は宮本さんの著作から教わるまで詳しく知ることもなく、一読後、「そういえば、3、4歳のころ、川でそんな風景を見たことがあるな」と、深い記憶の底から当時の光景が浮かび上がってきただけでした。あのころは我が高津川にも鮭が遡上していて、周囲の大人たちが興奮気味に網をもって川に走っていたものでした。
このように、庶民の生活史というのは意識的に収集しておかないと、人々にとっては当たり前すぎて、特にそうした事実を記録したり伝承したりする必要性も緊急性もないため、継承が困難となりがちです。

宮本さんは著書(「筑摩日本文学22」文庫)のなかで、「過去、日本の共同体では子供たちが神隠しにあうと、大人たちは鐘や太鼓をたたきがなら、「子供を返せ!」と呼ばわりながら、村中を練り歩いていた」というエピソードを紹介しています。
以前、宮本常一さんについてこのブログでも触れたのですが、この本はなかでも、超お奨めです。
「あとがき」は石牟礼道子さんが書いているのですが、これも読ませます。

(石牟礼さんの著作集(全17巻)は左翼系の藤原書店から刊行されていますが、こうした日本の最良の知的営為に保守サイドはもっと深い敬意を払うべきではないのでしょうか)

私は益田ひろみさんの拉致について思いをめぐらせながら、宮本常一が書き残したこの故事を思い起こしていました。伝統的な共同体を「封建的」と切り捨て、欧米的個人主義を「進んだもの」とし、そのあげく、ひたすら崩壊に向かいつつある日本。日本再生のためのさまざまなヒントは、欧州にではなく、中国にでもなく、2000年以上も続くわが国の共同体が育んできた英知のなかにあるのではないのでしょうか。私たちは「洋奴哲学」の奴隷であってはならないと思います。







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青木直人講演会のお知らせ
第1回
「田中角栄とはなんであったのか」
8月28日(土)
18時〜20時30分

第2回
中国経済はどこに行く
〜日本企業を待ち受ける「危険な斜面」
10月23日(土)
18時〜20時30分

どちらも
会場 文京シビック3F第1第2会議室
参加費 3000円

※予約は受け付けておりません。入場は先着順となります。

会場案内
http://www.city.bunkyo.lg.jp/sosiki_busyo_shisetsukanri_shisetsu_civic.html




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