尖閣戦争

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西尾幹二さんと対談しました。それをまとめた本が11月2日(予定)に発売されます。緊急出版『尖閣戦争~米中に挟み撃ちされた日本』(祥伝社新書)です。

今回の事件を前にして、中国の軍事的恫喝だけが目に映りがちですが、事態の深刻さは想像以上に根深いものがあります。
中国に取り込まれてしまい、「宦官」と化した日本の政治家、官僚、財界人、企業関係者、宗教界、マスコミなどの存在、さらに、日米安保の実効性にも100%の信頼を置けるとも言い切れなくなったことがあきらかになってきたからです。

前者についてはこれまで何度も何度も名指しで批判してきましたが、なんせ数が多くて(笑)、告発のペンがついていきません(笑)。

吉村昭さんの「海の鼠」(『魚影の群れ』 新潮文庫収録)を読むと、四国のある島に鼠が大量発生し、最初はともかく、最後には島民たちもそうした異常に疲れ、慣れきってしまうという悲劇が描かれています。このように、異常も通常になると、誰もそれをおかしいとは思わなくなるのです。これが今現在の日本の姿なのです。


後者についても、同様です。
発売中の「どっちがおっかない!?中国とアメリカ」(幻冬舎)のなかで、田母神俊雄さんとともに、日米安保が本当に日本を守るのかどうか、について疑問を呈しましたが、今回の尖閣戦争は図らずもその危惧を裏付けるものになっていまいました。

西尾さんといい、田母神さんといい、尊敬すべき、骨太の『日本派』です。対談では勉強させていただきました。改めて感謝申し上げます。


中国がかさにかかって、中国船船長の釈放以後、対日攻撃をエスカレートさせています。
押せば引く。民主党は戦いではなく、ひたすら融和を求めている。この際、叩けるうちに徹底的に叩く。さらに国際社会の前で日本に土下座させ、誇りを奪い、国民のナショナリズムの牙を抜く。米国はあきれ返り、台湾東南アジアは失望し、中国に擦り寄ってくるだろう。
中国国内では共産党の「愛国的姿勢」に国民は拍手喝采する。腐敗まみれと絶望的な格差に対するフラストレーションは「愛国攘夷」と「日本バッシング」に収斂されていくだろう。

ここまでしても、日本政府は中国との「戦略的互恵関係」を求めてくる。なによりも中国の内需が日本経済の命綱だと信じる「中国最強商社」伊藤忠の前相談役が日本の大使なのですから。財界は首根っこを押さえられ、政界からも本格的な対抗処置の動きは出てこない。これで中国が高飛車にならなければ、そちらが嘘でしょう。

だからこそ、冷静に、事態の推移とその本質を把握することが肝要です。私たちジャーナリストまでが頭に血が上りっぱなしで、情勢分析を怠ったのでは話になりません。「敵」を知り、己を知ることこそが最優先されるべき課題なのです。

ここで話は110数年前にさかのぼります。

『当時、諸外国のわが国を遇するあたかも少児を遇するがごとく、殊に隣邦老大国の我に対する不遜軽侮の態度、憤慨に堪えざるものあり』

『明治19年(1896年)8月、清国潜軍提督丁汝昌、その軍艦鎮遠、定遠、済遠等の北洋艦隊を率いて、我国に来たり、至る処暴慢の状見るに忍びざるものあり。
寄航の途、長崎に寄港するや、その水兵良家の処女を辱めんとし、長崎警察の巡査これを妨げしを名とし、水兵等、警察署に闖入して乱暴す』

明治維新後、日本の危機はなにも、欧米列強の軍事脅威だけではありませんでした。東洋の大国清国の軍事力は日本をはるかにしのぎ、威嚇のために来日した北洋艦隊は長崎において乱暴狼藉を繰り返し、日本の官憲はなにひとつ手出しすることができませんでした。
上に上げた文章は、日本のアジア主義の先駆となった福岡・玄洋社の手になる「東亜先覚志士紀伝」からの引用です。
いまやGDPで日本を追い抜き、米国につぐ世界第二位の経済大国に成長、それに伴い、失地回復の民族的衝動をばねに、アジアと世界に軍事的覇権を拡大しつつある中国。その海軍力は平成版・北洋艦隊として現実化しつつあります。

だからこそ、政府は海上保安庁の撮影した事件のビデオを主権者たる国民の前に明らかにすべきなのです。あの海域で何が行われていたのか。
それは明治19年、北洋艦隊が長崎において、日本の「良家の処女を辱めんとし、・・・水兵等、警察署に闖入し、乱暴した」ことに怯えつつも、しかし同時に、帝国主義の恐るべきパワーゲームが日本に及んできたことに日本国民が覚醒した故事と重なり合うはずです。

尖閣戦争は日本転換のページをめくりました。世界は友愛に満ちているわけでもなく、地球市民はどこにも見あたりませんでした。そして、話せばわかる相手ばかりではないことにも気づかされたのです。これまで散々、珍論、迷論で国際情勢を論じてきた識者たちは一部の例外を除けば、いま沈黙のなかにいます。

私たちに必要なこと。それは玄洋社に集う日本人たちがそうであったように、恐れることなく、事実を事実として承認し、危機に備える覚悟と知恵をもつことではないのでしょうか。先人たちは国難を前にして観念ではなく現実を選択するだけの勇気と柔軟性をもっていたのです。私がよく言う「ファクト」と「リアリズム」。学ぶべきはこのことなのです。

最後に、これだけは日本人の誇りにかけて言っておかなければなりません。
たとえ、政府が腰砕けとなったとしても、私たち国民までが戦いの意思を放棄したわけではありません。我々には戦いの用意があり、いまだリングにタオルを投げてはいないのです。

私は日本に生まれ、日本に育ち、やがては、日本の土に還ってゆく存在であると自己を規定しています。そうであるならば、ごくごく自然な感情として、母なる祖国日本の苦難に対してともに奮闘し、加勢したいと願うものであります。
右も左もありません。私はいままでも、そしてこれからも、一人のナショナリストでありたいと思っています。

最後にひとこと。
財界は、中国政府の領海侵犯に対して公式に意見を表明すべきです。またくどいようですが、現役の中国大使を送り出し、自社のHPで堂々と「中国最強商社」と豪語している伊藤忠商事も、そこまで言うのなら、フジタの4人の社員の解放にその「最強性」を活用してほしいものです。









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